汚物処理室では尿や便の廃棄や蓄尿を行うケースが多いため、薬剤耐性化した腸内細菌(ESBL産生菌※、CRE※)や湿潤環境を好む多剤耐性緑膿菌の温床となりやすいです。汚染された環境や器材、手指を介して医療関連感染を発生させないためにも、汚物処理室の感染対策は重要です。
※ESBL産生菌:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌
※CRE:カルバペネム耐性腸内細菌科細菌
【ツボ1】清潔・不潔のゾーニング
どの施設も汚物処理室は狭いため、使用後の汚染された器材と消毒済みの清潔な器材が混在しやすくなります。交差感染のリスクを下げるためには収納棚などを用いて清潔と不潔のゾーニングを行います。(写真1:棚ごとに清潔・不潔を表示し分けた例)また、清潔な器材を保管する場所は、水はねが発生しやすい汚物槽やシンク周囲からはできるだけ離しておきます。
【ツボ2】毎日の環境清掃
環境に付着している微生物を減らす目的で、頻回に手指が触れる場所や汚染を受けやすい場所を中心にアルコールなどの消毒薬を用いて1日1回以上清掃を行います。特に、汚物槽やシンク周りは水気を拭き取り乾燥状態にしておくことが重要です。また環境清掃は臭気対策にもつながります。
毎日の清掃ポイント
- ドアノブ
- 汚物槽のフチや水栓
- シンク周囲
- 蓄尿棚
- 検体置き場
- はかり
- 器材乾燥ゾーンの棚やカゴ
- 蓄尿測定装置やベッドパンウォッシャーの操作パネル など
【ツボ3】個人防護具の設置
排泄物や体液の廃棄時、器材の洗浄・消毒時は水はねにより手指や顔、白衣が汚染する可能性があります。職員を感染症から守るために、水はねの影響を受けない場所に手袋・エプロン・マスク・ゴーグルなどの個人防護具を設置しましょう。(写真2:設置例)個人防護具着脱前後の手指衛生は必須であるため、アルコール手指消毒剤も設置します。
東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。