公益社団法人 愛媛県看護協会

看護の知恵袋 感染対策のツボ

【Vol.156秋号】インフルエンザの感染対策

インフルエンザは家庭内や学校、職場だけでなく医療・介護・福祉施設内でも拡大し、患者や入所者が亡くなってしまう事例もあります。そのため、インフルエンザの流行を防ぐためには施設全体での感染対策が重要です。

【ツボ1】インフルエンザとは

インフルエンザウイルスA型、B型によって引き起こされる感染症です。潜伏期間は1~3日間(2日間が最も多い)、感染期間は発病1日前~発症後5日間です(重症例や免疫が低下している場合は感染期間が延長)。症状は、38°C以上の急な発熱と全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛、咳、咽頭痛、鼻汁が一般的ですが、次の症状でもインフルエンザと診断されたことがあります。流行期にはインフルエンザを疑うことが必要です。

  • 『食欲がないだけ』『手足に力が入らなくなった』『転倒後に動けなくなった』:特に高齢者は症状が出にくい。
  • 『持病の喘息がひどくなった』:喘息を持っている方は、思い込みに注意。
  • 『鼻汁だけ』『咽頭痛だけ』:解熱鎮痛剤や副腎皮質ホルモン剤の常用者では、体温が上昇しないことも。

【ツボ2】個人で行う感染対策

vol156_01.jpgインフルエンザの感染源は、ウイルスを含む鼻汁や口腔内分泌物です。感染経路は、咳やくしゃみなどと一緒に飛散したウイルスを吸い込む飛沫感染、そして鼻汁や分泌物が付着している環境に触れた手からの接触感染があります。そのため、感染対策手指衛生サージカルマスクの着用環境清掃・消毒が重要となります。特に発症者は感染を拡大させないためにしっかり行いましょう(咳エチケット)。また、体調管理や人混みへの外出を控えることも感染対策になります。インフルエンザワクチンの接種も、発症予防や重症化予防に一定の効果があります。

【ツボ3】施設で行う感染対策

インフルエンザ流行前

  • 職員全員に標準予防策(手指衛生・マスク着用・咳エチケットなど)やインフルエンザ対策に関する研修を行う。
  • 職員によるインフルエンザの持ち込みを防ぐため、体調不良時は所属長への報告やサージカルマスク着用、食事時はほかの職員と別の場所・時間でとることを指導する(体調不良の職員が無理をして勤務し、患者や職員にインフルエンザが拡大してしまった事例も多い)。
  • 職員にインフルエンザワクチン接種を推奨する。
  • 施設利用者・入所者にインフルエンザワクチン接種を検討する。
  • 施設の入り口や待合室、エレベータなどに咳エチケットのポスターを掲示する。

インフルエンザ流行期

  • 入院患者や入所者に対して、発熱や風邪症状がないか毎日確認する。症状があればインフルエンザを疑い感染対策を遵守する。
  • 新規の入院患者・入所者には、発熱や風邪症状の有無を確認する。
  • 有症者の居住エリアは、アルコールなどで環境清掃・消毒を行う(ドアノブ、手すり、テーブル、リモコンなど高頻度接触表面を中心に)。
  • 必要に応じて面会制限のポスターを掲示する。
  • 外来エリアでの交差感染を防ぐため、有症者には咳エチケットを説明し他の患者から離れて待機してもらう。
  • インフルエンザ発症者と接触した患者や入所者に、抗インフルエンザ薬の予防投与について検討する。
  • インフルエンザによる集団発生や死亡事例発生時には、最寄の保健所へ相談・報告を行う。
  • 地域のインフルエンザ流行状況を把握する。

pic_vol156_qr.jpg参考 資料:季節性インフルエンザ感染対策の基本(日本感染管理ネットワーク発行)

(編集:東予感染管理サークル)

東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。

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