手指衛生は新人ナースでも知っていますが、ベテランナースでも実際はできていないことが多いものです。
手指衛生を『知っている』から『している』へスキルアップし、感染症のアウトブレイクを防ぎましょう。
【ツボ1】手指衛生の方法
私たちの手指には、私たち自身が持っている微生物や、触れた患者さんや医療環境由来の微生物が無数に付着しています(写真1)。
この微生物を別の患者さんや医療環境につける行為が感染拡大の原因となるため、以下の手指衛生により手を清潔にすることが重要です。
①アルコール手指消毒剤による手指消毒
手に汚れがなければこの方法が効果的です。アルコール手指消毒剤は、手指に付着した微生物を効果的に殺菌できる点、手洗いシンクまで行かなくても病室などで手軽に消毒できる点で優れています。また、保湿剤を含む製品も多く、手洗いよりも手荒れしにくくなっています。(写真2:写真1の手をアルコール消毒後に培養したもの)
②流水と液体石けんによる手洗い
手に汚れが付いたときや、アルコールに抵抗性のある微生物(芽胞菌やノロウイルス)を保有する患者や病室環境に触れた後はこの方法が有用です。液体石けんの殺菌効果は、アルコール手指消毒剤ほどではありません。
【ツボ2】手指衛生5つの瞬間
2007年に『医療現場における手指衛生のためのWHOガイドライン』がリリースされ、その中の『手指衛生5つの瞬間(左図)』が広く知られるようになりました。それにより、ひと昔前の『一処置一手洗い』ではなく、複数のタイミングでの手指衛生が標準的となっています。
- 患者に触れる前:血圧測定やケアの前など
- 清潔/無菌操作の前:採血や注射、吸引、口腔ケアの前など
- 体液曝露の可能性の後:オムツ交換、吸引、口腔ケアの後など
- 患者に触れた後:血圧測定やケアの後など
- 患者周辺の物品に触れた後:ベッド柵に触れた後、リネン交換の後など
たとえば喀痰吸引の場合では、①物品準備前(清潔操作前)、②手袋など個人防護具着用前(清潔操作前)、③喀痰吸引後の手袋を脱いだ直後(体液曝露の後)、④エプロンやマスクをはずした後(体液曝露の後)、⑤後片付けの後(患者周辺の物品に触れた後)と、一処置で最低5回の手指衛生が必要です。
アルコール手指消毒剤を、病室の入り口やカートに設置したり個人で携行するなど、必要なときに手指衛生が実施できる環境を作りましょう。
【ツボ3】手荒れ対策
手荒れは手に細かい傷ができている状態です。手荒れがあると、①傷への刺激から手指衛生を控えたり、傷に病原菌が定着することで医療者が感染源となる、②傷への血液付着からB型肝炎などに感染する、などの危険性があります。
手荒れ対策のポイント
- 保湿剤などによる日頃のハンドケア
- アルコール手指消毒薬や手袋が手荒れを助長する場合は、製品の代替を検討
- 手洗い時は湯を使わない・手をぬらして石けんをつける・石けんをよくすすぐ
- 手の拭き取りは愛護的に行う
- 手洗いの直後に手指消毒を行わない
- 長期の手荒れは皮膚科に受診する
(編集:東予感染管理サークル)
東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。