医療、介護の場面では『消毒薬』と言われるものがたくさんあります。しかし、正しく使用しないと十分な効果が得られません。今号と次号の2回にわたり、主な『消毒薬』の基本的な使い方や注意点についてご紹介します。
【ツボ1】アルコール
多くの微生物に消毒効果があり使用が簡便な消毒薬です。手指や皮膚などの生体や、環境、器具などに用います。消毒効果が最も高いのは約80%のアルコール濃度です。一般的にはノロウイルスには消毒効果が十分ではありませんが、最近は添加物を工夫しノロウイルスにも効果を持たせた手指消毒薬もあります。手術部位、中心静脈カテーテル挿入部などの消毒には、消毒効果の持続性を目的として1.0%のクロルヘキシジングルコン酸塩を含有したアルコール製剤の使用が推奨されています。
注意点
- 刺激性があるため、創部や粘膜への使用は禁忌となっています。
- アルコールアレルギーの皮膚にはポビドンヨードやクロルヘキシジングルコン酸塩で代用します。
- プラスチック樹脂やゴム製品を劣化させるため、消毒する環境や器具は材質の確認が必要です。
アルコールの消毒スペクトラム
一般細菌 | 大腸菌 | 緑膿菌 | 真菌 | 結核菌 | HBV/HCV | ノロ | インフル | 芽胞菌 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | △ | 〇 | × |
【ツボ2】次亜塩素酸ナトリウム
アルコールより幅広い微生物に消毒効果があります。非金属性の器具(経腸栄養や吸入器具)だけでなく、血液やノロウイルスに汚染された環境やリネン類の消毒にも用います。皮膚の消毒には不適切です。
一般的な製品として『ハイター(6%濃度)』『ミルトン(1%濃度)』『ピューラックス(6%)』があります。
(表1)次亜塩素酸ナトリウムによる消毒例
消毒対象 | 消毒濃度 | 消毒時間 |
---|---|---|
血液やノロウイルスで汚染されたリネン | 0.1%(1000ppm) | 30分 |
嘔吐物や汚物で汚染された床や便座 | 0.1%(1000ppm) | 5~10分 |
食器や吸入器具 | 0.01%(100ppm) | 60分 |
注意点
- 光で分解されるため原液は暗所保管、希釈液は遮光容器で保管します。
- 有機物(汚れ)と混ざると消毒効果が低下します。消毒前には洗浄等で有機物の除去が必要です。
- 塩素ガスが発生するため、使用時は換気や容器にフタをします。
- 薬液と長時間接触すると金属の腐食やワックスの劣化などがあるため、二度拭きが必要です。
- 類似名として『ワイドハイター』がありますが、『ハイター』ほどの強力な消毒効果はありません。
次亜塩素酸ナトリウムの消毒スペクトラム
一般細菌 | 大腸菌 | 緑膿菌 | 真菌 | 結核菌 | HBV/HCV | ノロ | インフル | 芽胞菌 |
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〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 | △ |
【ツボ3】ポビドンヨード
手指や皮膚、粘膜など幅広い生体消毒に用います。一般的な製品として『イソジン液10%』があります。
注意点
- 消毒効果がでるまでに2分間程度必要です(薬液が乾燥するまでが目安)。
- アルコールや洗浄剤を含むポビドンヨードは、粘膜や創部、首から上の消毒には不適応です。
ポビドンヨードの消毒スペクトラム
一般細菌 | 大腸菌 | 緑膿菌 | 真菌 | 結核菌 | HBV/HCV | ノロ | インフル | 芽胞菌 |
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〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × |
(編集:東予感染管理サークル)
東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。