前号に引き続き、医療・介護の場面で使用される主な『消毒薬』の基本的な使い方や注意点についてご紹介します。
【ツボ1】クロルヘキシジ ングルコン酸塩
皮膚に対する刺激が少なく、においもほとんどありません。皮膚に残留して消毒効果が持続するため、本薬剤をアルコール消毒薬に添加した製品もあります。また、環境や器具の消毒にも用いられます。一般的な製品として『ヒビテン』『マスキン』『ステリクロン』『ヘキザック』があります。
注意点
- 粘膜への使用により、ショックの発現が報告されているため、膀胱、膣、口腔などへの使用は禁忌となっています。
- 粘膜でも0.02%濃度であれば、結膜嚢に使用することができます。ただし、2分以内に滅菌水などで洗い流す必要があります。創傷部位には0.05%濃度で使用してください。
- 本薬剤を綿球が入った万能ツボに使用する場合は、使用期限を24時間としてください。細菌に汚染された消毒薬を使用して、医療関連感染を引き起こした事例もあります。
クロルヘキシジングルコン酸塩の消毒スペクトラム
一般細菌 | 大腸菌 | 緑膿菌 | 真菌 | 結核菌 | HBV/HCV | ノロ | インフル | 芽胞菌 |
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〇 | 〇 | △抵抗性 | △ | × | × | × | △ | × |
【ツボ2】第4級アンモニウム塩
『逆性せっけん』ともいい、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどがこれにあてはまります。皮膚・粘膜への刺激や金属への腐食性、においが少ないため、皮膚や粘膜、環境や器具など幅広い消毒に用いられています。一般的な製品として『オスバン』『ハイアミン』『ザルコニン』『マキロン』があります。環境清掃クロスの多くにも主成分として使用されています。
注意点
- クロルヘキシジングルコン酸塩同様に、万能ツボ等の細菌汚染があります。詰め替え消毒用スプレーや、産婦人科領域で使用するイルリガートルにつぎ足しで使用している場合は、消毒薬が細菌汚染を受けていることがあります。定期的な洗浄と乾燥、容器の交換などをお勧めします。
第4級アンモニウム塩の消毒スペクトラム
一般細菌 | 大腸菌 | 緑膿菌 | 真菌 | 結核菌 | HBV/HCV | ノロ | インフル | 芽胞菌 |
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〇 | 〇 | △抵抗性 | △ | × | × | × | △ | × |
【ツボ3】両性界面活性剤
洗浄効果が強い消毒薬のため、洗浄を兼ねた環境や器具(浴槽、沐浴槽、足浴バケツなど)の消毒に用いられています。一般的な製品として『テゴー51』『ハイジール』『サテニジン』があります。
注意点
- 床面などへの使用後は、薬液が乾くまで滑りやすいため注意が必要です。
両性界面活性剤の消毒スペクトラム
一般細菌 | 大腸菌 | 緑膿菌 | 真菌 | 結核菌 | HBV/HCV | ノロ | インフル | 芽胞菌 |
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〇 | 〇 | △抵抗性 | △ | △ | × | × | △ | × |
上記3消毒薬 共通の注意点
- 血液などの有機物や石けん類と混ざると消毒効果が低下します。消毒前には対象物の汚れなどを除去してください。
- 水道水で希釈して使用する場合の使用期限は24時間としてください。時間の経過とともに希釈に用いた水道水の残留塩素が消失し、緑膿菌やセラチア菌、セパシア菌などの消毒薬抵抗性菌が増殖する可能性があります。
(編集:東予感染管理サークル)
東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。