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看護の知恵袋 医療安全ミニ情報

【Vol.143夏号】ワンポイント・アドバイス「経鼻栄養チューブ挿入の安全管理について」

img_onepoint_su01.gif経鼻栄養チューブは、看護師が取り扱う機会の多いチューブです。日本看護協会は「緊急安全情報(平成17年)」のなかで、胃泡音により挿入位置確認した後に栄養剤を注入したにもかかわらず患者が死亡した事故が平成14年から9例あったと報告しています。

医療安全全国共同行動より出された推奨する対策、認定病院患者安全推進協議会からの提言等より事故防止対策を下記にまとめました。

1.誤挿入の危険のある患者さんを識別する

①意識障害、②認知機能障害、③嚥下障害や麻痺、④咳嗽反射の低下、⑤鎮静薬の使用、⑥気管挿管・気管切開などの患者さんは、経鼻栄養チューブが気管や気管支に誤挿入されてもそのことを知らせることができません。厳重に位置確認をする必要があります。

2.複数の方法で挿入位置を確認する

「聴診で空気注入音が聞こえる」ことはチューブが適切な位置にあることの証明にならないことが明らかになっています。経鼻栄養チューブが胃内にあることの確認方法として、吸引により胃内容物を確認することが推奨されています。
pH測定による確認は、制酸剤投与中の場合、信頼性が低いとされています。
X線による確認の場合は、X線不透過の経鼻栄養チューブを使用することが必要です。胃内容物が吸引できないとき、胃内容物の吸引が十分でなく、胃内容物の確認ができないとき、手術後で消化管の位置が変わっている可能性があるときなどは、最初からX線で確認することが望ましいとしている文献もあります。胃内容物が吸引できない状況下でX線撮影が迅速にできない場合は、挿入長さを変える、体位を変える、30分放置し再度胃内容物を確認する、入れ替えるなどの方法を試み、それでも胃内容物が吸引できない場合はX線で確認すべきであるとされています。複数の人数ではなく複数の方法で確認することが重要です。

3.事故のタイミングを知る

経鼻栄養チューブ挿入、または交換後の初回注入時に誤注入が発生しています。栄養剤の「初回注入時」は位置確認を十分行い、注入中および注入後の観察を注意深く行う必要があります。

img_onepoint_su02.gif4.栄養剤注入前の観察を十分にする

栄養剤を注入する前には、マーキングの位置がずれていないか、口腔内にチューブが蛇行していないか、胃内容物が吸引できるか確認します。チューブが抜けかかった状態で栄養剤を注入すると、気管へ逆流するおそれがあります。途中まで抜けかかっている場合は、チューブを全て抜き、最初から挿入する必要があります。

5.患者・家族に説明し同意を得る

経鼻栄養チューブを挿入し経管栄養を行う前には、患者評価を行い、経鼻栄養チューブの必要性・実施目的・気管への迷入や誤嚥などのリスクについて説明し同意を得たうえで開始します。

6.マニュアルを作成する

経鼻栄養チューブ挿入と位置確認のためのマニュアルがあることで、誰でも同じように円滑に実施することができます。

(文責 加藤裕子)

経鼻栄養チューブは、看護師が取り扱う機会の多いチューブです。日本看護協会は「緊急安全情報(平成17年)」のなかで、胃泡音により挿入位置確認した後に栄養剤を注入したにもかかわらず患者が死亡した事故が平成14年から9例あったと報告しています。

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