心電図モニタは患者の循環動態を観察し、異常時はアラームで知らせてくれます。しかし、心電図モニタ装着中でありながらも患者の急変に気付かず、対応が遅れた事故が発生しています。同様の事故を分析した結果、安易に心電図モニタ(以下、モニタ)を使用している現状や、モニタの正しい使用・管理方法が周知されていない等、教育・指導あるいは機器・備品等の管理体制に関する課題などが示唆されました。
そこで、今回は心電図モニタ管理で注意したいことをまとめてみました。
1.モニタ装着の必要性とアラーム設定
各医療機関の現状に合った「モニタ装着や除去に関する基準」を明確にし、モニタ装着の必要性をチームで共有するようにしましょう。アラーム設定が適正であるか、チームで定期的に検討してください。また患者・家族には、装着する理由及び装着予定期間を説明しておきましょう。
2.アラームの基本設定(音・画面表示)
アラームは病棟内スタッフに聞こえる音量であることと、紛らわしい音がなく、聞き取りやすい音であることを定期的に確認してください。「消音」や「切」にしないことが原則です。アラームに連動する設備や装置の導入を検討してみるのもいいかもしれません。検査などで一時的にモニタを外すときは、再開忘れを防ぐ工夫が必要です。
3.電極の管理と電波環境の把握
アラームのほとんどが電極外れや電池切れによるテクニカルアラーム(誤報)であると言われています。テクニカルアラームが頻発すると「無駄鳴り」が多くなり、アラームに対する感受性が低下します。その結果、急変時の対応が遅れてしまう可能性があり、下記で述べる教育やトレーニングが重要になってきます。また電波の届きにくい場所も把握し、周知しておいた方がいいでしょう。
4.アラーム鳴動時の適切な対応体制
スタッフステーションには常時、看護師が誰かはいるように意識していると思いますが、気がつくと誰もいない状況になっていませんか?アラームは「誰かが対応するだろう」ではなく、具体的な対応体制を決めておいたほうが安心です。施設によっては「モニタ番」を決めているところもあります。また対応可能なモニタ数の上限を決めておき、必要時はベッドコントロールを行わなければならないでしょう。漫然とモニタを装着せず、医師とのカンファレンスでモニタを外せる患者の検討を行って下さい。
5.モニタの使用に関する教育・トレーニング
誰でも適正なモニタ使用ができるように、以下の教育プログラムを組み込むことが有効です。
- 電極の適切な貼付方法
- テクニカルアラームを低減するための方法
- アラーム設定方法
- 緊急対応が必要な重要アラームや波形
- モニタの点検方法
6.モニタ機器の点検
モニタ機器の点検は医療機器安全責任者が中心となり、機器メーカーなどと相談しながら、定期的な保守点検計画を立案しましょう。また、モニタ機器の日常点検も担当者と点検項目を決めて実施しましょう。点検結果は記録しておくことが必要です。モニタと記録の時間がずれていると、医療事故発生時に問題となります。基準となる時計を決め、毎日同時刻に確認してください。機器は故障することもあります。不具合がある時の対応も明確にしておきましょう。
(文責 宮嶋優里)