公益社団法人 愛媛県看護協会

看護の知恵袋 医療安全ミニ情報

【Vol.139夏号】ワンポイント・アドバイス「身体抑制について」

img_onepoint_139_01.png身体抑制とは、道具または薬剤を用いて、一時的に当該患者の身体を拘束し、その運動を抑制する事を言います。これまでの医療や介護の現場では援助技術の一つとして安全を確保する観点からやむを得ないものとして行われてきた経緯があります。
しかし、近年、身体抑制は原則として全て虐待に該当する行為と考えられています。身 体抑制はどの病院・施設・診療科においても看護師が直面する共通のテーマです。

そこで、今回は身体抑制時のポイントをまとめてみました。

1.身体抑制・行動制限の必要性の評価

img_onepoint_139_02.png身体抑制の適応は、認識障害や転倒の危険性、破壊・ 粗暴行為などの状態があり、かつ3要件(切迫性 ・非代替性・一時性)を全て満たすことが基準となります。医師や看護師でカンファレンスを行い、患者の安全面・事故防止の視点から対策の必要性をアセスメントすることが大切です。

2.必要性とリスクなどについての説明と同意

抑制を開始する時には、必要性とリスクなどについて説明と同意が必要です。夜間など緊急時やむを得ず抑制を行う場合、看護師が説明して同意を得ますが、基本は医師です。抑制がなぜ必要かを十分に説明し、ご納得していただく事が大切です。

3.抑制・制限中の患者の状態の観察

身体抑制がもたらす弊害としては、身体的・精神的・社会的弊害などがあります。抑制する事により関節の拘縮や、褥瘡の発生、神経障害などが発生する可能性があり、精神的苦痛を与えます。身体抑制に関する経過観察ができる様式のシートなどを用いて観察し、麻痺や損傷の有無、抑制具による苦痛や不快を観察し、記録することが大切です。

4.回避・軽減・解除に向けた取り組み

抑制解除の基準は下記の3項目です。

  1. 抑制の適応と判断した症状や状況の消失
  2. 治療の進行に伴う生命維持装置からの離脱
  3. 症状の改善や治療目的のための「安静保持」が不必要になった場合

抑制中も継続的に必要性をアセスメントすることが必要です。最低2時間毎、できれば自分が行える範囲で訪室し抑制用具を除去することや、看護師の体制や家族の協力があれば可能な限り抑制を除去することが大切です。

5.患者・家族の不安の軽減への配慮

患者様は、行動を抑制されることによる屈辱や、あきらめ・怒り等からせん妄が悪化したり、精神的苦痛が生じたりします。患者様だけでなく家族には、入院させたことに対する罪悪感・怒り・後悔といった精神的ダメージを与えます。恐怖を与えないような対応や、患者様や家族の方々の思いを受け止め、不安を軽減する関わりを持つことが必要です。

6.人権への配慮

img_onepoint_139_03.pngこのような身体抑制は、人権擁護の観点から問題があるだけでなく、抑制される患者様のQOL(生活の質)を根本から損なう危険性を有しています。身体抑制を容認する考え方を問い直し、「事故防止対策」であると安易に正当化することなく、患者様の立場になってケアを行うという基本姿勢で取り組んでいきましょう。

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