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【Vol.146春号】ワンポイント・アドバイス「転倒予防対策について」

転倒予防対策について

img_onepoint_146_01.gif転倒・転落は、患者要因や環境要因などにも影響するため予見が難しく、対策を講じても防ぎきれない事例も多く経験します。今回は、臨床現場の継続的な課題である、転倒予防について考えていきます。

1.転倒要因のアセスメント

転倒の発生要因を把握するときのツールとして、アセスメントシートは有効です。入院時や患者の状態・状況が変化した時に再評価を行い、予防策の見直しを繰り返していきましょう。

2.予防策を考える時のポイント

運動機能のみに障害がある場合と、運動機能に加えて認知・精神の症状がある場合とでは、対策が違います。

(1)運動機能障害のみの場合の対策

①環境調整、②排泄・生活パターンの把握、③ナースコール指導、④移動手段の指導、見守り移動

(2)運動機能に加えて認知症状・精神症状のある場合

①~④に加えて、
⑤ナースステーションから近い病室を考慮、⑥離床センサーの利用、⑦ベッド柵の検討、⑧抑制などでベッドの乗り越え防止、⑨排泄時の付き添い、⑩外傷の予防 など

「移動能力レベル」と「認知・精神症状の有無」の両面からアセスメントすることで、効果的な対策の絞り込みが容易になります。

3.病室の環境整備

患者さんがどのような行動をするのか、ベッド上でどんな物を使用するのかなどを知り、具体的な動きを想定し対策を立てましょう。

(1)よく使うものを定位置に配置する

ティッシュ、眼鏡、ペットボトル、リモコンなどは、すぐ取れるところへ配置します。

(2)車椅子やポータブルトイレは見えなくする

自分で移乗しようとする気持ちを思い留まらせます。

(3)ストッパーをかける

キャスター付きの物は、つかまって重心が傾くと転倒に繋がります。医療者、患者ともストッパーをかける習慣をつける取り組みが必要です。

4.予防用具・用品の活用

(1)離床センサー

img_onepoint_146_02.gif患者の行動パターンを把握し、告知してほしいタイミングから離床センサーを選択します。歩行や座位が安定している患者には「床センサー」で良いのですが、歩行に監視が必要な患者では、「衝撃吸収マット」を併用します。また、座位保持が不安定であれば、床センサーではなく「柵センサー」や「クリップセンサー」が有効です。

(2)外傷予防グッズ

転倒を繰り返している患者には、ヒッププロテクターの着用、家具の角にぶつかった時の衝撃を緩和するコーナーガードなども考えていきましょう。

5.患者・家族指導のポイント

(1)患者・家族参画型

img_onepoint_146_03.gif患者・家族に、転倒の危険性を自覚してもらうことが必要です。入院時のアセスメントを患者さん自身がチェックすることで、自覚することができます。指導は、視覚的にわかりやすい形(動画やポスター形式など)にする、予防策は、患者・家族に一緒に考えてもらうなど、患者・家族の印象に残るように工夫しましょう。

(2)転倒予防ポスター

転倒予防についての注意喚起ポスターを、患者・家族の目につきやすいところへ掲示して、日常生活の中で転倒の注意を呼びかける方法も効果的です。

転倒を減らすためには、医療スタッフだけでは限界があります。患者・家族も転倒予防に参加していただくことが重要です。

(文責 山根保子)

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