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感染対策のツボ:医療機関における院内感染防止対策の法的義務と評価

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看護の知恵袋:感染対策のツボ医療機関における院内感染防止対策の法的義務と評価

【Vol.172秋号】2022年10月28日

新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療機関における院内感染防止対策がこれまで以上に注目されました。
今回は、医療機関と医療従事者が果たすべき法的責務とその評価について紹介します。

【ツボ1】医療法等による医療機関の責務

2007年の医療法改正により、すべての医療機関には院内感染防止対策のために以下の体制確保が義務付けられました。

①指針の策定

院内感染対策のための施設ごとの基本的な考え方や、以下の②~④に関する基本的方針などを定める。

②院内感染対策委員会(ICC)の開催

委員会は院長をトップとした各職種の代表者で構成され、1ヶ月に1回程度の定期会議を持つことが望ましい。院内感染発生時は、原因分析や改善策の立案・実施と従業者への周知を図る。

③従業者に対する研修の実施

施設全体に共通する内容を職種横断的な参加のもと年2回程度定期的に開催する。

④感染症の発生状況の報告と改善のための方策の実施

発生動向調査とICCや関連部門との情報共有により、発生の予防を図る。院内感染対策マニュアルの整備や定期的な見直し、地域の専門家などへの相談行える体制を整備する。

また、2011年と2014年には厚生労働省より「医療機関における院内感染対策について」が通知されました。当時、社会的問題となっていた薬剤耐性菌の対策を中心に、ICCと院内感染制御チーム(ICT)の体制や、ICTによる週1回の院内ラウンド、全ての患者に対して行う標準予防策及び病原性微生物の特性に応じた感染経路別予防策、医療機関間の連携、アウトブレイク対策等が盛り込まれています。10年以上経過した今でも、この通知が医療機関における院内感染防止対策の基本となっています。

【ツボ2】入院基本料に含まれる感染対策

入院時には、入院基本料の一部として、入院診療計画書の作成や褥瘡リスクの評価、栄養管理計画書の作成が必須とされていますが、院内感染防止対策も患者に行うべき必須項目として入院基本料に含まれています
「院内感染防止対策の基準」を、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの感染を防止するにつき、十分な設備と体制が整備されていることとし、ICCの設置や会議の開催、「感染情報レポート」を週1回程度作成し活用、手指衛生のために各病室への水道や手指消毒剤の設置が施設基準として明記されています。
医療法や厚生労働省の通知等とあわせると、院内感染防止対策の組織的な体制の確保や活動が満たせていない施設は、保健所や厚生支局から医療機関としては認め難いと指摘される可能性も考えられます。

【ツボ3】感染対策を評価する診療報酬

ここまで紹介した医療機関としての最低限の体制に加えて、充実した院内感染防止対策の体制を有する医療機関には、下記の加算により評価され診療報酬を受けることができます。医療機関の規模にもよりますが、加算の種類により年間数百万円から数千万円以上の収益が期待できるほか、院内感染の発生が減少すれば、不要なコストを削減することができます。

加算名【点数】 施設基準の一部
感染対策向上加算1
【710点】
加算1施設同士の連携、加算2、3施設と連携(条件を満たせば指導強化加算30点も算定可)
抗菌薬適正使用のための体制を有する地域や全国の院内感染対策サーベイランスに参加
新興感染症の発生時に受け入れができる体制を有する
ICT構成員に感染管理認定看護師等が必須 = 専門性のある看護師として評価されている
※日本看護協会には、「感染管理認定看護師養成推進事業」「認定看護師の育成支援金」の制度があります。
感染対策向上加算2
【175点】
加算1施設と連携(条件を満たせば連携強化加算30点も算定可)
抗菌薬適正使用のための体制を有する地域や全国のサーベイランス参加で5点も算定可
新興感染症の発生時に受け入れができる体制を有する
感染対策向上加算3
【75点】
加算1施設と連携(条件を満たせば連携強化加算30点も算定可)
抗菌薬適正使用のための助言を受ける地域や全国のサーベイランス参加で5点も算定可
新興感染症の発生時に受け入れができる体制、もしくは発熱患者の診療体制を有する

他に「外来感染対策向上加算」「小児抗菌薬適正使用支援加算」「耳鼻咽喉科小児抗菌薬適正使用支援加算」等もあります。

(編集:東予感染管理サークル)

東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。

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