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感染対策のツボ:エアロゾルと換気

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看護の知恵袋:感染対策のツボエアロゾルと換気

【Vol.173新春号】2023年1月27日

新型コロナウイルス感染症は、流行当初より飛沫感染と接触感染の対策、および3密(密集、密接、密閉)回避と換気が重要とされていました。さらに感染症が拡大するなかで、エアロゾル感染が疑われる事例も明らかとなり、換気が感染対策のなかでも重要な位置づけとなってきました。

【ツボ1】エアロゾル感染

エアロゾル感染は、空気中に漂うウイルスを含んだ微粒子によって感染する様式を指します。くしゃみや咳で飛散する飛沫(直径5μm以上)は、重力にひかれて1~2mで落下しますが、それより小さいエアロゾルは、たばこの煙のようにしばらく空気中を漂うことがわかっています。また、エアロゾルは、喀痰吸引や気管内挿管時だけではなく、くしゃみや咳、大きな発声によっても発生します。デイルームにおける集団での食事や病棟の多人床、閉鎖的な職員エリアなどにおいて感染者が発生したとき、お互いに会話がなく近距離でないにもかかわらず、感染が拡大してしまった事例はエアロゾル感染かもしれません。

【ツボ2】換気の実際

換気とは、室内の空気と外界の空気を入れ替えて、室内に新鮮な空気を取り入れることです。新型コロナウイルス感染症対策では、ウイルスを含むエアロゾルを除去・希釈する目的で行います。厚生労働省は、換気の悪い密閉空間を避けるための目安として、以下の方法を推奨しています。

機械換気

換気扇や外気処理空気調和機(外調機)等で常時の機械換気を行い、空間内の在室者一人あたり毎時30mの換気量を確保することが必要とされています(30mは一般家庭の8畳部屋と同程度)。例えば、定員が患者4名の多人床であれば、換気必要量は毎時120mが必要となります。省エネルギーのために、夜間の換気を意図的に停止していた施設では、クラスターが発生したこともあるため、まずは自施設の換気能力や運用状況を確認しましょう。また、設備の経年劣化により、換気性能が設計当初より低下してしまうため、定期的なメンテナンス、換気口やフィルタの清掃も必要です。

自然換気

窓やドアを開放し、毎時2回以上の換気(30分に1回以上、数分間程度、窓を全開にする)が必要とされています。空気の流れを作り換気の効率をよくするためには以下に注意します。
①複数の窓がある場合、二方向の壁の窓(可能であれば対面の窓)を開放する。
②窓が一つしかない場合は、サーキュレータ等を用いて室内の空気を強制的に室外へ押し出す。

※窓開けによる換気は、療養環境(室温・湿度)に大きく影響を与えるため、特に夏季や冬季は温度計を設置して室温をモニタリングする必要があります。

【ツボ3】換気の評価

換気の評価方法には、二酸化炭素濃度測定器(CO2センサー)があります。市販でも手軽に購入できますが、精度が低いものやアルコール消毒に反応するものもあるため注意が必要です。

測定器は室内で空気の流れが悪く換気しにくい場所に設置し、人が在室している状態で測定します。室内の二酸化炭素濃度が概ね1,000ppm以下であれば、必要換気量が満たされていると判断します。反対に、二酸化炭素濃度が1,000ppmを超える場合は、在室人数に対して換気量が不足しているため、換気方法や収容人数、滞在時間の見直しなど改善策を講じる必要があります。二酸化炭素濃度が1,000ppmを超え、窓開け換気ができない場合には、不足換気量を補う風量を有するHEPAフィルタ付の空気清浄機を使用することで換気の代用とすることもできます。ただし、空気清浄機による換気では二酸化炭素が除去されないため、効果は測定値に反映しません。大きな空間では、大型の空気清浄機1台より中型を複数台設置するほうが効率はよくなります。

(編集:東予感染管理サークル)

東予感染管理サークル(Toyo Infection Control Circle:TICC)は、地域の保健医療福祉施設における感染管理教育の支援を目的として、東予地域に在籍する有志の感染管理認定看護師によって感染対策セミナーを中心とした活動を行っています。

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